
6月20日、ベレことベレヌスが、息を引き取りました。
22年の中京記念を筆頭に、平地と障害で計6つの勝利を挙げ、沢山の人たちを沸かせ、魅了した名馬でした。
今回の投稿では、珠洲に来てからのベレヌスについて、写真と共に振り返り、お伝えいたします。
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ベレヌス(父:タートルボウル、母:カフヴァール)は、昨年5月4日の新潟・障害オープンをラストランに引退し、同月28日にグルーヴィットと一緒に、珠洲ホースパークにやってきました。
(▲左からグルーヴィット、ベレヌス)
ベレヌスとグルーヴィットは、共に22年と19年の中京記念を勝利した中京記念制覇コンビでもありました。
最初の対面相手は、ポニーのテンでした。
ラチ越しにお顔を寄せ合って、何かを静かに交わしているような、穏やかな対面になったのが、印象的でした。
ホースパークでの愛称は、馬名の頭2文字から「ベレ」にきまりました。 (以降、他のお馬さんも含めて、愛称でご紹介します。)
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テンとの穏やかな対面とは裏腹に、入場当初、先輩サラブレッド達とは緊張関係にありました。
慣れない環境への警戒心と、現役さながらのパワーを持て余していたのかもしれません。
まだ精神的に安定していない様子で、特に群れを率いるカウ(カウディーリョ)に挑む様子もみられました。
このため放牧のグループを2つに分け、小さな集団の中で少しずつ、群れに馴染ませ、関係を育む方針をとりました。
入場から1カ月ほど経つと、同グループのアル(レッドアルティスタ)との2ショットが、見られるようになります。
アルは神経質(怖がり)な一面があり、信頼関係を築くのに時間がかかるお馬さんです。
これまでテン以外との2ショットを見る機会に乏しく、スタッフにとっても嬉しい驚きでした。
また食いしん坊のポッキー(サトノアクセル)とも、餌を分け合って過ごせるようになり、グループの中での関係性を、着実に築いてゆきます。
このころから、入場当初の挑戦的な姿勢や、精神的な不安さは少なくなり、グループの中での居場所・役割をみつけて、心身ともに放牧地に馴染んでいった様子でした。
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その後、全頭合流しての放牧が始まると、唯一の雌馬であるセリ(セリシーヌ/ヴォリション)をめぐって、再びベレ・カウの間に緊張が生じるようになります。
セリはこれまでカウと行動を共にし、カウと共に群れを率いてきましたが、ベレの合流後はカウから離れてベレに近づこうとする姿を見せ始めます。
当然カウはよく思わず、セリがベレに近づくたび、間に割り入って、ベレを追い払う構図が続きました。
(▲ベレからセリをガードするカウ)
とはいえベレ本人には、セリに近づくそぶりもなく、カウにけしかけられても応戦せず距離をとるのみで、成熟した対応を見せつづけます。
その甲斐あってか、カウとの緊張関係は徐々に収まり、ついにはセリとベレが共に過ごすことを、カウも受け入れ、認めるようになりました。
群れのリーダーであるカウに、闘わずして存在を認めさせたことは、スタッフにとっても驚きで、新しいリーダーシップの形を予感させるものでした。
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ベレはまた、ポニーのテンとも分け隔てなく接し、友達のような関係を築いていました。
体格差もあり、サラブレットの集団からあぶれがちなテン。
ベレはそんなテンと一緒に、放牧地での多くの時間を過ごしていました。
日中は、同じ餌場を分かち合う光景も。
食事は、群れの力関係が表れる瞬間で、序列の高い馬から良い餌場に、低い馬は他の餌場にまわります。
ポニーのテンは、他馬から追い払われてばかりなのですが、ベレだけはテンを追い払わず、共にご飯を分け合って仲良く過ごしていました。
またテンは時折、(比較的序列の近い)ポッキーにいたずらを仕掛けるのですが、
怒ったポッキーがテンに仕返しすると、今度はベレが割り入って、さらにポッキーに仕返しをする、といった光景もみられました。
スタッフとして、小さなテンに大きな友人ができたことがとても嬉しく、同時にベレの、他の馬に対する在り方に、真の強さを感じた瞬間でした。
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ベレはまた、人にも優しく、触れ合いやすいお馬さんでした。
入場当初は馬体のゆがみがあり、そのストレスからか、精神的に不安定な様子もありました。
しかし角馬場での調整をつづけるうちに、心身共にバランスがとれ、安定するようになりました。
乗馬未経験者を乗せても嫌がるそぶりなく、鞍上にあわせて動いてくれ、人を選ぶことなく安心して乗せることができました。
今年の春からは、更にコンディションが上がり、 運動をこなすたび、馬体が艶づき、動きもしなやかに、 体も一回り大きくり、群れの中でも一番の存在感を放つようになっていました。
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去る6月20日(金)午後9時25分、ベレは静かに旅立ちました。
15日の放牧中に体調を崩し、熱中症のような症状が見られたため、獣医師による手厚い治療と、スタッフによる懸命な看護を続けてまいりましたが、残念ながら回復には至りませんでした。
最期は、ベレが特に好んでいた放牧地のやわらかな砂の上で、スタッフと親しい友テンに見守られながら、穏やかにその時を迎えました。
その優しさと強さから、人と馬の双方から信頼され、ZUZUホースパークの中心的存在になりつつあった最中の出来事で、
残念で、残念で、なりません。
ベレヌスを悼み、6/28(土)〜7/31(木)の期間で、献花台を珠洲ホースパーク内に設置いたします。
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砂浴びや雪浴びを、全身で楽しみ、心から堪能しているあなたの姿。
放牧地で見せてくれた、あの穏やかで優しい表情。
ただ見ているだけで心が癒されました。
みんなあなたのことが、大好きでした。
そんなあなたのそばで、共に過ごすことができて、本当にありがとう。
天国でも、どうか思う存分、ごろんごろんしていてね。
そして、あなたを愛し、応援し、関わってくれたたくさんの人や仲間の馬たちを、優しく導き、見守っていてください。