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珠洲でのバーデンヴァイラー
9/22(日)、バーデンことバーデンヴァイラーが、急性腸炎のため亡くなりました。
22年のマーキュリーカップ、23年の佐賀記念と、重賞を2勝し、通算成績は20戦7勝。
多くの人々を沸き立たせ、魅了した、名馬でした。
競走馬時代には、その高い潜在能力に対し、ムラっけや気性の難しさを指摘されることもありました。
しかし珠洲に来てからは、競走馬時代とは異なる、静かで柔らかな表情も、多く見せてくれるようになりました。
今回の投稿では、珠洲に来てからのバーデンヴァイラーを、写真と共に振り返り、お伝えいたします。
競走馬時代とはまた違ったバーデンヴァイラーの一面を、お伝えできれば幸いです。
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バーデンヴァイラーは6月の帝王賞を最後に引退し、その後7月27日に、珠洲ホースパークへやってきました。
角居さんと対面した後、珠洲の大地へ降り立ち、放牧地隣のパドックに入ります。
いつもであれば、先輩馬たちが放牧地から集まって緊張感漂う顔合わせが始まるのですが、この日はポニーのテンくんがご挨拶にくるのみでした。
お互いの鼻を寄せ合って、和やかな初対面。
大きな体とは裏腹な、穏やかな振る舞いが印象的でした。
放牧地の先輩馬たちを見ても、動じることなくジッと佇む姿からは、これまでの馬とは違う、静かな貫禄のようなものを感じました。
ホースパークでの愛称は、馬名の頭4文字から「バーデン」に決まりました。
(以後この記事でも、バーデンとしてご紹介を続けます)
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放牧地での共同生活には、人間社会同様、先輩馬たちとの信頼関係を築く必要があります。
他方で競走馬は、人との信頼関係を育んできた一方で、馬同士での関係を築いた経験は殆どありません。
このため新入りのお馬さんは、通常、放牧地での共同生活に慣れるまで少しの時間を要します。
しかしバーデンは例外で、私たちの想像以上にすんなりと、放牧地での生活に馴染んでしまいました。
最初に仲良くなったのは、ポッキー(サトノアクセル)。
お顔をつけて青草を食み、また尻尾に顔を寄せ、アブを追い払ってもらう間柄を、いつの間にか築いていました。
また、ベレ(ベレヌス)やテンくんとの2ショットもよく見ることができました。
なかでも先輩馬の中で最古参のアルくん(レッドアルティスタ)と、早々に良好な関係を築けたことは嬉しい驚きでした。
アルくんは通常、警戒心が強く、初対面のお馬さんには牽制したり距離を取ったり、馴染むまでに時間のかかるお馬さんです。
他方のバーデンは、誰を警戒するでも脅かすでもなく、ただ静かに草を食みながら、気づけばするりと相手の間合いに入っている、距離の詰め方がとても上手なお馬さんでした。
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バーデンはまた、人との距離も近いお馬さんでした。
夏の放牧地では、お馬さんの体調管理のため、放水による水浴びを1日数回実施しています。
通常は、スタッフが各馬の呼吸や汗の状態を見ながら適宜水浴びさせるのですが、バーデンは自らスタッフに寄ってきては水浴びをせがみます。
本当に気持ちよさそうに浴びるものですから、スタッフもついつい長めにサービスしてしまいます。
水浴びが終わった後も、その場から動かず、スタッフに静かに目線を送っておかわりをねだる、愛らしいお馬さんでした。
水浴びをしながらうとうと、ついには微睡むまでに。
スタッフに体を預けてなされるがまま、本当に気持ちよさそうで、愛らしいお馬さんでした。
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去る9/22(日)午前2時半に、バーデンは亡くなりました。
急性腸炎でした。
獣医師の治療を受け、前日日中まで容体は回復傾向にありましたが、その後容体が急変し、未明に息を引き取りました。
珠洲での一夏を終え、放牧地での集団生活にも馴染んだ最中での出来事でした。本当に、残念でなりません。
水浴びのとき、この世の幸せの全てを一身に浴びているかのような、幸福に満ち溢れたあなたの顔が、大好きでした。
見ているだけなのに、あなたの幸せのお裾分けをもらっていました。
これまでも、応援してくれた人の数だけ、夢と、喜びと、幸せのお裾分けをしてきたのだと思います。
天国では、思う存分水浴びさせてもらってね。
そしてあなたに携わり、応援してくれた、沢山の人と馬を、見守っていてね。